「ジキル博士とハイド」原作小説のあらすじとネタバレ感想・考察

「ジキル博士とハイド」あらすじとネタバレ感想・考察

「ジキル博士とハイド」のネタバレ含むあらすじ、感想と個人的な解釈などをつらつら。

タイトルにもある通り、がっつりネタバレしてます。

ネタバレいやだな〜って方はご注意。

ネタバレなしで感想だけ知りたい人は、「ざっくり感想」のところまでどうぞ。

そこまでならネタバレしてないです。安心安全。

目次

ざっくり感想

「ジキルとハイド」という2人は、よく題材にされるのを見かけます。
なのでいつか元ネタというか原作というか、書籍を読んでみたいな~と思ってたんですけど、ついにこの前読み終えましたとさ。

ちなみに、ここではジキルと言っていますが、ジーキルとも呼ばれたりします。

恐らく、ジキルとハイドと聞いくと、大体の人は「2重人格のあの話か」と思うはずです。
確かに2重人格の話ではあるのですが、さらに私は勝手に「すごいトラウマか何かから突然2重人格が生まれてしまって、それを制御できなくて困っている」といった話かと思っていたんですが、実はそうでもないという。

さらに読む前は「2人分の人格が存在する」のかとも勝手に思っていたのですが、これも違ったんですよね。

そこのところが意外ではありました。まあ、勝手に想像してただけなのだけどね。

ジキル博士とハイドの話はいろいろな出版社さんから出版されています。
中にはさらっと読めそうなページ数のものもあるので、気になる方はいつの日かぜひ読んでみてください。

現代でよくいわれる「2重人格」とは、また別の設定がなされている2重人格なので新鮮なはず。

ちなみに、ジキル博士とハイドというお話は、ジキルの友人である人物からの目線で話が進みます。語り目線はジキル氏ではないのです。
のちにジキル氏の供述というか独白もあるにはありますが、基本的は友人の目線で物語が進展していきます。

さて、ここから下はがつがつネタバレしていきます。
自分で読みたい!と思っている方はご注意!

あらすじ

ジキル博士とハイドのストーリーをざっくり3行でまとめるとこんな感じ。

  • 謎の殺人事件!ジキル博士が犯人をかくまってるのでは?
  • 家に閉じこもってしまったジキル博士「しばらく誰とも会わない」
  • ジキルの第2人格がハイドであることが判明

最後の最後でジキル博士が2重人格であるということが判明するといったストーリーでした。

こんなお話

ジキル博士はそこそこの知名と名誉、そして称号を持っているそれなりに地位のある人物。
しかし、そんな彼は、自分が得ている低くない地位とそれに付随する世間体を過剰に意識するようになってしまい、少しの失敗であろうとも大きな恥を感じる性格になってしまう。

過剰反応的な性格をとうとうこじらせてしまったジキル博士。
お行儀良いのはもううんざりだから、失敗や醜態を純粋に楽しみたいと強く願うようになる。

そして彼は、「自分が完全に別の誰かになってしまえれば、醜態をエンショイできるな」と考えつく。そして、ジキル博士が自ら作り出したのが「ハイド」という、彼のもうひとつの人格であった。

彼は「自分の容姿を変え、さらには人格も変えてしまう」という薬を発明したのだ。つまり、2つめの人格であるハイドは薬によって人為的に生み出されたもの。

このハイドは、ジキルとは真反対のとても狂暴で非人道的な性格をしていた。
だが、この部分に関してジキルは「あの薬を飲んだ瞬間に、もし自分が何か良いことをしたいという気持ちがあれば、天使が生まれていた。だから、たまたま悪事を働きたい気持ちの方が大きかっただけにすぎない」とコメントしている。
これを聞くと、ジキル博士の気持ちを増幅させて別人格を生み出す薬だと考えられる。

「天使が生まれていた可能性だってある」とは言うジキル博士だが、ジキル氏がそもそもハイドという人格を生み出すことに決めた動機は「悪事を働きまくりたいから」だ。
ジキル博士は「ジキルの姿では世間と上手に付き合って、文化的な人間をふるまう。でもその裏側ではハイドという姿になり、とんでもない悪行や犯罪に手を染めることができる。ハイドでどんな悪事を犯しても、普段はジキルの姿で素知らぬ顔をして過ごせる。ジキルという姿は、ハイドという悪魔を隠しておくためのカクレミノに過ぎない。わはは」とまで言っている。

はじめはうまいことジキルとハイドの2つの姿・人格を使って生活を楽しんでいたが、そのうちハイドの方をうまくコントロールできなくなってきてしまう。
というのも、例の薬を服用しすぎたせいで、薬を飲まなくても勝手にハイドに変身してしまうようになったのだ。

実際に、ハイドの姿をした人物がジキル博士の家に入っていく姿まで人々に目撃されてしまう。様々な悪行を働いてきたハイド、もしハイドの姿で公衆の面前に出ようものならあっという間に捕まって絞首刑は免れない。
そうして、ジキル博士は家にこもるようになる。

とうとうハイドの姿のまま元に戻れなくなってしまったジキル博士。ジキルの姿に戻るには、とある特殊な塩が必要なのだが、ハイドの姿のままではそれを入手することもできない…。

最後は、「ジキル博士はハイドに殺され、ジキル博士の部屋に閉じこもっているのはハイドだ」と考えた友人たちがジキルが立てこもっている部屋をぶち開けて中に突入する。
部屋にいたジキルもといハイドは、その場で薬品をあおって自ら命を絶った。

そんなお話でした。

まぁ、ここに書いたことがすべてではないので、ジキル氏の供述をもっと知りたい…とかとかな人は読んでみると面白いはずです。

感想と考察

ここからは考察もまじえた感想をば。

「カクレミノ的犯罪に対するあこがれ」の話だった

このお話でキモとなるのは、ジキル博士がそもそもどうしてハイドという人格を生み出すにいたったのかという、その動機の部分です。

あらすじのところでも書きましたが、この動機というのが「完全な別人になりすまして悪事を働きたい!」です。

これって、わりと共感できる人もいるんじゃないかな~と思います。

ネット社会な今現代、実際に「別人になりすまして悪事を働く」ということがネットワークを介して行われている犯罪なんかもたくさんあります。
代表的なのが、「アカウントの乗っ取り」や「IPの偽装」です。

アカウントを乗っ取れば、そのアカウントの本人を騙ってなんでもできてしまうわけで。よくツイッターとかで「乗っ取られて変なツイートされました…(´・ω・`)」と言う人がいますが、それですね。

それと、IPの偽装も同じ。IPというのは「個人を特定できる情報」です。このIPを偽って悪事を働く人の数は少なくないのです。

こういった「カクレミノ的犯罪」を、ネットワーク上ではなく現実世界に持って実行したのが、ジキル博士とハイドというお話なのです。

「調子にのっちゃあかんよ」という教訓めいた話

そして、そんなジキルとハイドの話からは教訓めいたものを解釈することもできます。

それは、「こそこそ後ろ暗いことをやってるとそのうち追い詰められて墓穴を掘るぞ」ということです。
それと、「はじめは気晴らし程度に悪事を働いていただけかもしれないけど、そのうちそれが本業になるぞ」という解釈もすることができるかと。

ジキル博士は、「例の薬の飲みすぎ」で元に戻れなくなってしまいました。
果てには、薬を飲んでもいないのにハイドの姿になってしまうようにすらなる。

そして、あらすじのところでも書きましたが、ジキルは自分が開発したこの薬に関して「もし良い行いをしようという気持ちが強ければ天使が生まれていた」と供述しています。

つまり、この薬の本質は、飲んだ人の気持ちに左右される部分もあるのです。
ただ単に「めっちゃ悪い人になる」だけの薬ではないということ。

この薬の併用をしすぎた結果元の姿に戻れなくなってしまったということは、ジキル氏は「悪事を働くことが本業」となってしまったという解釈もできるのでは、と思うわけです。
つまり、根っからの悪人になってしまったというわけです。

ジキルとハイドというお話では、一人の人間が2つの全く正反対の性格をとどめておくことはできないようです。

ジキルとハイドという世界での2重人格

ジキルとハイドといえば2重人格で有名です。
なので、このお話の世界観における2重人格について触れておきたいと思います。

最近の創作やキャラクター設定なんかでは、「人格ごとに記憶は共有されない」とか「強すぎるストレスを受けて第2の人格が生まれてしまった」といった設定がよく見受けられます。

ジキルとハイドという世界における2重人格の設定としては、以下の要素があります。

  • ジキルが目的をもって別の人格を生み出した
  • 薬を飲むことで別人格になる
  • 記憶・意識は共有されている

もう少し掘り下げていきます。

目的があって人格を生み出した

ジキル氏は、「悪事を働く時のための姿としてもう一人の自分自身を生み出すぞ!」と考えたわけです。
これが、2つめの人格を生み出すにいたった動機です。

つまり、ここで言いたいことは、ジキル氏にはすでに潜在的に「悪いことがしたい!!」という渇望があったこと。

この「悪いことした~い!」という部分を実行に移すために、ジキル氏は自ら薬を開発し、見事実現させるに至ったわけです。

なので、他でよく見かける「なんらかのストレスでうっかり第2の人格が誕生!」とか「気づかないうちに別人格が誕生!」といった設定とは全然違う方向から2重人格というものを得た、という話なのです。

この点は新鮮だと思った。

薬を飲むことで別人格へ

ジキル氏は、自分で発明した薬を飲んでハイド氏に変身しています。

このお薬は「ジキルの感情を増幅させる薬」です。
「悪いことをしたいぞ!」というジキルの感情が、この薬を飲むことで「ハイド」という姿になって現れています。

つまり、このお薬は普段隠されている感情を前に押し出してくれる薬に他なりません。

記憶・意識は共有されている

ジキルとハイドという世界において、この2つの人格の本質的な部分には隔たりがありません。
つまり、意識も記憶も共有されています。

ここからくみ取れるのは、「2重人格」ではあるけれど、どちらもジキルという一人の人間であることは変わらないという点ではないかと。

2重人格と聞くと、その言葉に持つイメージによっては「ああ、ひとりの人間の中に2人分いるんだな」と思うかもしれません。

でも、ジキルとハイドというお話の中ではあくまでも「人間も性格も実は一人分」でしかないのです。

というのは、第2の人格を得ることになった動機と、その手段に関係しています。
ジキルはもともと「悪事を働く人になりたい」と思っていたのです。そしてジキルは、その感情が元となってハイドに変身しました。

つまり何が言いたいかというと、2重人格になる前からすでにジキルの中にはすでにハイドが存在しているという話。

つまり、「2人分」ではなく、ジキルもハイドもひとりの人間のことを指しているのです。
伝わるといいな。

ハイドという名前

最後に、ハイドという名前についても少し。

英語が分かる人ならなんとなく察しがつくかとは思いますが、このハイドという名前は、「Hide」という英語と同じ発音です。

Hideは、「隠す、隠された、外側からは見えない」といった意味のある英単語。

ただ、ハイド氏の名前のスペルは「Hyde」ですけれどね。

スペルこそちがえど、音は同じ。
偶然かもしれないけれど、そうじゃないかもしれない。

このことから、ハイド氏は「ジキルの隠されていた性格が表に出た姿である」ことに由来していると考察することができます。

このことと合わせてジキルとハイドというお話の結末を考えると、「ジキル氏が隠していたウラの性格が、最後には表の顔になってしまった」という風にも言えます。

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